北陸新幹線延伸計画の問題点

■北陸新幹線建設事業

この事業は、高速道路などの事業と違い、市民に対してルートや斜坑、立坑(掘削残土や掘削機搬の出入口)などの位置、計画を知らせる必要がありません。

「どこ」を「どんな方法」で通るかなどを住環境面などで一番影響を受ける市民の意見を聞かずに事業を進めることができる法律(全国新幹線鉄道整備法)に基づいています。

環境影響評価方法書

事業の唯一の情報源は、環境影響評価方法書です。
右京の会では、方法書の資料を基にルートなどを想定し、問題点などについての検討作業を進めています。

■世界でも類をみない長大トンネル

敦賀〜新大阪間の約8割がトンネル

北陸新幹線延伸計画は、福井県敦賀市から美山、京北そして京都駅を通って新大阪までつなぎます。美山や京北には駅はできません。

京都市内では、北山などの山間部から市街地を含めた約40kmをトンネルで縦断するという、世界でも類をみないほどの大規模な工事が行われます。

環境破壊や財政問題

長大なトンネルであること、京都駅が地下駅になることなどから膨大な掘削残土が発生し、その処分や環境への影響は計り知れません。

膨大な建設費用

建設費は少なくとも約2兆1,000億円と言われています。米原ルートは約5,900億円との資産です。安くて環境負荷の少ない他のルートではだめなんでしょうか?

この事業費の負担割合は、JRからの貸付料を除いた額の国が3分の2、沿線自治体が3分の1となります。

京都市の財政状況

金沢〜敦賀間の工事費用の福井県の場合を参考に、京都市の負担額を算出すると、約1,000億になると思われます。

京都市は、財政破綻を口実に市民に新たな負担増を押し付けていますが、市民の生活より問題だらけの北陸新幹線事業を優先するのでしょうか?

市街地を地下トンネルが縦断

地下水の枯渇

京都の地下には琵琶湖と同じくらいの地下水があると言われています。この豊かな地下水のおかげで、おいしいお酒やお豆腐、和食や茶の湯など京都の伝統文化が発展してきましたが、地下トンネルの建設はこの水脈に大きな打撃を与えます。

マンション住民の立退き

同じ法律で進めているリニア神奈川県駅(仮称)周辺では、市街地の地下トンネルの土かぶり(地上からの深さ)が13mと浅くなることで、マンションなどの基礎部分がトンネル本体部分んい当たるとして、現在、3棟のマンション住民を追い出し、解体作業が進められています。

京都駅でもホームへのすり付けにより土かぶりが浅くなることが想定されます。ビルやマンションがリニア駅周辺と同じになる可能性があります。

新幹線の安全性が確保されない

南海トラフ巨大地震を無視

方法書には、北陸新幹線建設の目的について、「南海トラフ巨大地震により影響を受ける東海道新幹線への代替機能を担う」としています。

しかし、新大阪駅周辺は南海トラフによる津波被害が想定(大阪市のハザードマップ)されており、津波は地下構造の新大阪駅から大深度地下のトンネルを遡上することから、東海道新幹線の代替機能は果たせません。

活断層の検討がされない

また、活断層についても、「花折断層などと交差する場合はできる限り短い距離で通過する」としていますが、図面集には活断層図がなく「短い距離」とする根拠資料がありません。

2022年3月に発生した福島での地震(震度6強)による新幹線の脱線がトンネル内で起こることを想定していません。

■大規模な景観破壊が起こる

景観規制が検討されない

右京の会の想定では、北山などに大規模な斜坑などが建設されます。しかし、方法書図面集には自然風景保全地区が欠落しています。景観への検討がされません。

北山、東山の景観破壊

さらに、北山などにつくる斜坑などの建設のための重機搬入、トンネル掘削残土の搬出のための道路の建設などにより大規模な景観破壊が起こります。